今回は車体下部に泥汚れを再現します。戦車の仕上げにはウェザリングと呼ばれる経年劣化の再現や使われた環境による汚れなどを再現します。第二次大戦中の戦車など塗装の退色、サビ表現、雨だれなど派手に再現するのが醍醐味とも言えますが10式戦車は最新鋭の自衛隊戦車です。退色、傷、サビなど派手に再現するのはちょっと違和感があります。しかしいかに最新鋭の戦車と言えでも最初の動画のように不整地を走り回れば沢山の土を舞い上げ足周りを中心に派手に汚れます。今回は車体の退色表現を抑える代わりに足回りを中心に派手な泥汚れを再現にしてそれを見せ場としたいと思います。

●皆さんは戦車の底面の塗装はどうしていらっしゃるでしょうか?「見えないから全く塗装しない」「一応車体色だけは塗装しておく」など色々だと思います。自分は完成した戦車を持ち上げた時など、ちらっと底が気になるので泥汚れを再現しておく事が多いです。この10式戦車のキットは底面は何もなくノッペリしていますが、機密で公開されていない部分で取材ができなかったのではないかと思います。泥汚れの練習も兼ねて戦車の底から汚していきます。なお底面の塗装は迷彩塗装のテストに使ったものです。

●泥汚れには
AKインタラクティブの泥ウェザリングセットというものを使います。私もこの製品を使うのは初めてで試行錯誤する事になりそうですが、うまく使用すればかなりリアルな汚れが再現できそうです。
この製品ははっきり言って特殊な用途に使われる塗料セットで一般的な物ではありません。海外からの輸入品で取り扱いも極一部の店舗、通販のみという状態でどこの模型店でも入手できるわけではありません。しかしAFVモデラーの間ではネットで海外モデラーの制作過程を目にする事も多くなり、彼らが使用しているAKインタラクティブの製品をウェザリングに使用する事が浸透してきております。そこでこのブログではAKインタラクティブの製品を使うと共に、どこでも入手できる物を使いこの塗料セットと似たような効果のある方法も同時に紹介していきます。

●このセットには湿った土色、乾いた土色の2色のエナメル塗料と濡れた土を強調する透明な塗料と、暗い土色のピグメントと呼ばれる細かな粉。そして石膏の粉がセットされています。この製品の輸入代理店
マルタケインターナショナルで販売されるいるものには日本語訳の使い方解説書が付いています。

●ウェザリングにも実に様々な方法があり色々な塗料、素材が使われます。また時代によってその方法も色々変化していますが現在はピグメントと呼ばれる粉が重要な役割を担っています。実物の戦車が砂埃をかぶるようにこの粉を薄く筆で塗ったり、塗料の溶剤で溶いた塊を車体に塗り付けたりして使用します。このピグメントにも例えば「ヨーロッパの土色」「ベトナムの赤土色」などAFVモデルに必要なかなりの色数が揃えられており幅広い表現ができす素材ですが、このピグメントも取り扱いしているお店は限られておりどこでも入手できるものではありませんし、一つ800円ほどの価格は「ちょっと戦車でも作ってみようか」というモデラーにはなかなか手が出せないかと思います。

●さてまずは手軽な材料を使い泥汚れを再現してみます。東急ハンズで買った桐のおがくずとタミヤパテを溶剤で溶いてよく混ぜます。今まで自分はこうやって作ったものを車体の底や足回りぬ塗り付けていました。

●おがくずも入手しにくいものかもしれませんが、模型店でよく扱われているカラーパウダーも同じ素材のものですのでこれを使ってください。一袋200円ほどで購入できます。

●車体裏全体に塗り付けました。

●次は転輪のゴム部分を塗装します。普通のフラットブラックで十分なのですが、タミヤカラーから転輪のゴム部分用にラバーブラックというカラーが出ていますのでこれを使ってみます。また履帯用にダークアイアンという塗料も販売しています。

●転輪のゴム部分はエアーブラシを使い一度に塗ってしまいます。

●多少転輪に黒い色がはみ出しても気にせず進めます。この後のウェザリングで丁寧に塗りわけても無意味な事になってしまいますので。



●この三枚の写真は実物の車両の汚れ方ですが転輪とゴム部分の境界は全く分からなくなってしまっています。

●あまり汚しをしないからきれいに塗り分けがしたいという場合、エナメル系塗料で塗りはみ出した塗料を溶剤で含ませた綿棒で拭き取る方法もあります。

●ダークグレー、レッドブラウン、自衛隊色の茶色をブレンドした色で車体裏を塗りました。

●次はピグメントの代替に使えるものです。このブログの
「ヤークトタイガーを作る」で紹介したダイソーのパステルです。これだけ揃って100円で買う事ができます。

●単色では使えませんので焦げ茶、黄土色、ネズミ色をブレンドして色を作ります。

●ブレンドしたパステルを溶剤で溶いて車体裏、履帯一面に塗るとこんな風になります。結構リアルな土色になりました。

●AKインタラクティブの泥ウェザリングセットに話は戻ります。

●2色の塗料に石膏の粉を少々混ぜ込みました。暗い土色の塗料にはピグメントもブレンドします。

●2色の塗料を使い分け筆塗りします。明るい色は上方に使い乾きつつある泥汚れを再現します。

●転輪は綿棒で泥汚れを塗り付けました。

●履帯はダークアイアンをエアーブラシで塗装しました。

●こちらにも泥汚れを塗り付けます。

●ゴム部分にも薄く綿棒で泥汚れを塗り付けました。


●仕上がりはこんな風になりました。

●シャーシと車体を合体させ次回は完成です。