今回は塗装の済んだボディにウェザリング(経年劣化や天候や季節などによる汚れ)を施します。戦車や装甲車などのAFVと呼ばれるジャンルではウェザリングは一般的な塗装方法になっていますが、特に最近では海外モデラーの新しいウェザリングテクニックがどんどん雑誌で紹介されるようになり「カラーモジュレーション」「フィルタリング」「チッピング」と呼ばれる新しく手の込んだウェザリングテクニックが広まってきていますが、AFVならではの塗装法という事で戦車には関心がない他のジャンルのモデラーには馴染みがない塗装法だと思いますし、私を含めAFVを作るモデラーでも個々のテクニックについて完全に理解している方は多くはないと思います。
今回はそのAFVのウェザリングテクニックをカーモデルにも取り入れ「ダーティーカー」を作っていきますが、マニアックな特別な塗装法ではなく比較的シンプルで昔から行われているような定番のテクニック中心で仕上げたいと思います。

●窓のフレームを塗りボディ塗装が終わりました。これからこのボディを汚していきます。

●まず単色で塗ったボディ色に少し別の色味を加えたいと思います。油絵の具の白、茶、緑をランダムに点々と色を置いていきます。これは「ドッティング」とも呼ばれていますが比較的新しいテクニックの一つです。加える色味必ずこの3色というわけでなくボディ色によって色味や色数を使い分けてみてください。

●エナメル溶剤やペトロールを含ませた筆で油絵の具を広げていきます。これはハッキリした色をのせるのではなく単色のボディ色になんとなく茶色い部分、白い部分、緑っぽい部分を作り日光や雨風に晒されて風化したボディ表面の色の表情を作ります。


●撮影条件が違い色味が違ってしまいましたが「ドッティング」前、後の写真を並べました。

●ドアパネルやボンネットなどに影をつけるスミ入れですが今回はタミヤの新製品「スミ入れ塗料」を使います。エナメル系塗料の一種ですがスミ入れ用に濃度が調整された塗料で使い易い塗料です。ブラック、グレー、ブラウンの3色がありスミ入れする場所のベースの色により使い分けができます。

●蓋に細筆が付いておりドアのパネルラインでしたら十分に対応できます。

●文字の部分にブラックをそのまま使うと色が強すぎるのでエナメル溶剤で薄めブラウンを少し混ぜて使いました。AFVのウェザリングではよく行われるウォッシング(このスミ入れ塗料のように溶剤で薄めたブラックなどの塗料をボデイ全体を洗うように塗っていく塗装法)にも使えますがやはり原液では色が濃すぎるので様子を見ながらエナメル溶剤で薄めたり、ブラウン、グレーを混ぜてみたりして調整してください。


●今回ボディはウォッシングを行わずドッティングだけにしておきます。しかし運転席、シートは軽くウォッシングしました。

●運転席の足元は逆に原液のブラック、ブラウンを流しサビ汚れを表現しました。

●運転席はボディを被せてしまうので先にウェザリングまで完成させておきます。ドアの内側は筆で細かな傷を描き込む「チッピング」を施しました。この「チッピング」に関しては後日詳しく解説します。


●今回はジオラマベースに車体を固定してしまうので見えなくなってしまうシャーシは細かく塗り分けせずに、レッドブラウン、ブラックでおおまかに塗装した上に砂汚れを再現するため薄くタミヤカラーアクリルのバフを吹いた程度の塗装にしました。

●タイヤとホイールですが普通は部品を組み立て前に塗装しておきますが、部品の合わせが悪く内側を削ったり、接着したりと調整が必要だったため全部組んでから塗装しました。タイヤの白い部分だけエアーブラシで塗装してタイヤのゴム部分を含め全部筆塗りしました。

●シャーシと荷台、ボディを合体させました。荷台はレッドブラウンを塗りしましたが荷物を沢山載せて見えなくなる部分が多いのでおおまかに筆塗りしました。

●ここで気になるのは荷台とボディの高さの違いが出来てしまう事です。パッケージの完成写真を見るとほとんどボディの下部と荷台の下部のラインが揃っていますのでこれは修正が必要です。また写真をとり忘れてしまっていますが後部から見るとバンパーも左右の高さに差があり傾いてしまっています。どうやらシャーシがゆがんでいるようなのでシャーシそのものを修正する必要がありそうです。

●後部のゆがみですがシャーシが下に下がりすぎているのでもうちょっと上の位置に押し込んで固定する必要があるようです。その時にバンパーがゆがまないように左右のバランスを見て調整します。シャーシから荷台の底のパーツにかけて貫通するようにピンバイスで穴を開け、穴よりちょっと太めの真鍮線を押し込みながら、左右のバランスがとれた所で瞬間接着剤でしっかりと固定して修正します。これは輸入キットの品質が悪いという問題ではなくどうやらこのキットを購入してからかなり年数が経っており箱を傾けて置いてあったなど保管方法が良くなかったため、一部のパーツが変形していたかもしれません。ただこういったトラブルがあってもちょっとした加工で修正する事ができると言う例としてこの記事に書いてみました。

●位置が決まったら接着剤をすぐに硬化させるために瞬間硬化スプレーを使いました。

●荷台の高さの調整はシャーシと荷台の間にプラバンをはさみ調整します。

●これでシャーシと荷台、ボディの位置が修正できました。ウィンドウガラスを接着して車体がほぼ完成しました。

●ガスポンプの工作も同時に進めていきます。まず車と同じく下塗りにレッドブラウンで塗装してこれからの塗装の手順も車とほとんど同様に進めますが、このポンプの一台はマスキングゾルを使い塗装剥がれを表現するウェザリングで塗ってみようと思います。

●下塗り塗料がが乾いたらマスキングゾルを爪楊枝で塗ります。マスキングゾルは乾燥後ナイフでカットできるタイプとできないタイプの2種類ありますがこの場合はどちらでも使えます。塗装剥がれらしくあまり整った形にならないようにします。

●マスキングゾルが完成したらまずポンプ側面の色であるシルバーで塗装します。

●マスキングテープで各部分を塗り分けますがここでトラブルが発生です。

●側面のシルバー塗装がマスキングテープで剥がれてしまいました。レジンキットでは製品をシリコン型から抜くために油の一種である離型剤が使われており事前にパーツ洗浄するなど注意が必要でしたが、ついいつものインジェクションキットのつもりで塗装を進めてしまいました。中性洗剤やクレンザーを使用したりレジンキット専用の離型剤落しも発売されていますが、このガスポンプのように平面中心のシンプルな形のものでしたら塗装前に1000番ほどのペーパで表面を磨いてやるだけでも表面の油分が取れて塗料の食いつきも良くなり良かったかもしれません。この剥がれた面の塗料を1000番のペーパーで削り落とし他の面をマスキングしてシルバーを再塗装しました。幸いこの時は他の塗装面が傷つく事なく無事に修正ができました。

●デカール貼り、クリアコートにトップコート吹きと進めていきます。

●最後にマスキングゾルを剥がします。

●リアルな塗装剥がれができました。この後車とガスポンプのウェザリングを更に進めていきます。
次回に続きます。
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