前回塗料の種類と選び方1として塗料の種類や用途による選び方をおおまかに解説しましたが塗料の重ね塗りの事についてもこの項目で解説した方が良いかと思いまして塗料1回目の補足として追加したいと思います。この重ね塗りの知識は塗り分けやスミ入れ(くぼみや凹線に濃い色の塗料を流し込みシャドウを強調する)戦車模型の汚し塗装など幅広い分野で必要となりますし、各塗料の性質を知らないばかりに完成直前の作品を最後のひと塗りで台無しにしてしまわないようによく覚えておいてください。
今度は最初に重ね塗りの対応表を掲載します。これを見ながら説明しましょう。

まずラッカー系塗料で塗装した面に塗り重ねする場合です。強い塗膜で他の塗料に侵されにくいという性質ですので、上にエナメル系、水性アクリル系の塗料で塗り重ねしても下地に影響ありません。もし失敗した時はそれぞれの溶剤で拭き取っても下地のラッカー系塗料まで溶け出すことはありません。この性質を利用してラッカー系塗料の下地の上に細かい部分やスミ入れをエナメル系、水性アクリル系で塗装しはみ出た部分をそれぞれの溶剤を含ませた綿棒などで拭き取るという塗装法はよく行われています。しかし同じラッカー系を塗り重ねした場合、エアーブラシで薄く吹き付けたりする時は影響ありませんが、筆塗りの場合、同じ場所で筆を返してコネコネしているとすぐに下地が溶けて色が混ざってきますので注意が必要です。(表の△はこういう理由です)もしラッカー系同士の塗り重ねをする場合は一度に塗ってしまおうとせず、乾燥させながらすこしずつ塗り重ねするときれいにできます。とにかくこのラッカー系はすべての塗装を溶かしてしまうと覚えておいてください。もちろんエナメル系、水性アクリルの上にラッカー系の塗り重ねは基本的には不可です。(エアーブラシで薄く吹き重ねる程度の塗装なら結構問題なく塗れてしまいますが、塗料がひび割れするなどどんなハプニングがあるかわかりません。十分塗装に慣れるまでは基本を守って冒険しない方が良いです。)
次に水性アクリルです。乾燥した水性アクリル塗料の上にはエナメル系、水性アクリルの塗り重ねができます。同じ水性アクリル同士の塗り重ねですがこちらもラッカー系と同じく溶け出しますがラッカー系ほど強力ではなく筆で下地を何度もゴシゴシすると剥がれるという程度なので微妙なところですが○としました。こちらも乾燥させながら塗り重ねるのが良いかと思います。エナメル系も同じような感じですので○です。しかし塗装のはみ出しなど溶剤をしみ込ませた綿棒などでゴシゴシこすると下地が剥げてきますのでご注意ください。
次にエナメル系です。エナメル系も同じエナメル系同士では下地が溶けますがよく乾燥していれば普通の筆塗り程度ではなかなか溶けませんので○としました。水性アクリルでは下地は溶けませんのでこれは文句なしの○です。
自分の場合ですが基本的にベースの塗装はラッカー系、迷彩色などの重ね塗り、筆で塗る場所は水性アクリル、スミ入れ戦車などの汚し塗装にはエナメル系と3種類の塗料を使いわけています。
多くのモデラーの方も塗料の特性に合わせて数種類の塗料を使い分けている方が多いようです。